連続小説風14時間生放送レポート:妖精秘話(1)
第1話 「届かない招待状」
14時間生放送とは──
ファイナルファンタジーXIVが新生してサービス開始した8月27日を祝って毎年行われる公式生放送である。
FF14の “14” にちなみ、昼から深夜まで14時間ぶっ続けでスクエニ社屋から生放送が行われる。新情報や豪華ゲストが出演するメイン放送と、開発者のおじさん達が無理難題をクリアしていくサブ放送の2本が同時進行する狂気のお祭りだ。
この14時間生放送にはもうひとつ、隠れたイベントが存在する。
放送の裏で完全オフラインにて行われる、FF14プロデューサー兼ディレクターの吉田氏と、普段からFF14を盛り上げる活動を行っているコミュニティから招待されたプレイヤーとの座談会である。
7月上旬。
私── “焼酎うめぇ” というふざけた名前で活動しているおじさんは、微かな焦りを覚えていた。
帰宅してすぐにパソコンを立ち上げ、はやる心を抑えてメールチェックし、ツイッターのDMを確認しても、そこにスクウェア・エニックスからのメッセージは届いていない。
「おかしい……何かがあったに、違いない……」
そうぽつりと呟くと、私は友人であるムー○ン谷の住人宛てにメッセージを送るため、キーボードを叩きはじめた。
14時間生放送へ招待されるプレイヤーは、2年続けてお声がかかるのが通例だ。
1回目は緊張でガチガチになり全力で楽しめない人も多いだろう。あるいは、ある程度同じ顔ぶれを招待することで、活動するカテゴリの枠を超えて横の繋がりを広げてほしい。そんなFF14コミュニティチームの気遣いだと、風のうわさに聞いたことがある。
幸運なことに、私は昨年の14時間生放送にご招待をいただいた。昨年スクエニから連絡が届いたのは6月末日。思えば、招待状が届いた日は声を上げて大喜びしたものだ。
きっと今年もお声がかかるだろうと、6月下旬に差しかかかった頃から、遠足前夜の小学生のようなウキウキした気分で連絡を待っていた。だが、今年は7月上旬を過ぎても、何の音沙汰もない。最悪の結末が脳裏をよぎる。
「俺は……呼ばれなかったの、か……?」
だが、呼ばれない理由に心当たりがないわけではない。過去の招待者を振り返れば、エオルゼア生活を全力で楽しむブロガー勢、素敵な絵を描くイラスト勢、美麗なスクショを投稿するSS勢、丁寧な解説で人気の攻略動画勢、便利な機能を提供するツール勢など、どう考えても多くのFF14プレイヤーに貢献している人物ばかり。
一方の私といえば、パロディやネタばかり詰め込んだクソ動画を作ったり、ツイッターで妖精さんや吉Pのクソコラを投稿しているだけのおじさんだ。
あいつを呼んだのは失敗だった、座談会でなくモルディオン監獄に呼ぶべきだった、と判断されても不思議ではない。なぜここに呼ばれたかわかりますね?……そう呟くモルボルこと室内氏の顔が、閉じた瞼に浮かぶ。
そんなネガティブな思考が頭の中を巡り始めたときだった。○ーミン谷の住人──「むーむーのネタ帳」でお馴染み、むーむーさんからの返信が、ポーンという着信音と共に届いたのは。
『俺の方にもまだ連絡きてないよー』
私は心底安堵した。むーむーさんに連絡が来ていないのであれば、恐らくまだ他の誰にも招待の連絡が来ていないに違いない。スクエニから連絡が届き次第お互いすぐに報告しようぜ、と約束してメッセージのやりとりを終える。
アメノミハシラが実装されたばかりで、パッチノートを書くのに忙しかったのだろう。きっと来週あたりにはコミュニティチームから招待状が届くはずだ。そんな思いを巡らせながら、その日の私は床に着いた。
しかし、その希望は無残に打ち砕かれる羽目になることを、このときの私はまだ、知らない。
<つづく>